2014年1月12日日曜日

アメリカ就職への道(1) 企業で研究・技術系の仕事を見つけるための準備

Nov. 2013, Vol. 64, No. 1

- From editors --

アメリカでの就職には英語でのハンデはもちろんのこと、外国人であることによるビザの問題、レジュメ、面接など、日本とは大きく違うことがあります。今回の記事ではアメリカにおける就職活動についての記事を書いていただきました。今回はネットワーク作りまでを紹介していただきます。

これまでカガクシャネットのメールマガジンにてPh.D取得後のキャリアについていくつものエッセーが紹介されてきましたので、過去ログも参考にしていただきたいのですが(「アメリカ企業就職サバイバル」「アメリカ研究サバイバル」等)、今回のエッセーではこの就職難の時代に、アメリカで企業就職を目指す上で役に立ちそうなことをいくつかあげてみたいと思います。もちろん私も決して就職の斡旋のエキスパートではありませんので、エッセーの内容はこれまでの私の経験を元にしたもの、つまり、一つの例である、と考えていただければよいと思います。

企業で研究・技術系の仕事を見つけるための準備

-学業面

アメリカの大学院でのコースワークの内容の濃さは良く知られており、授業を取り過ぎると、研究の時間が少なくなるかも知れませんが、最初の1-2年は出来る限り幅広い知識を身につけるために、少し多めにコースワークをすることをお勧めします。また、企業就職に必須の授業も存在します。
例えば、私が在籍した工学系の大学院プログラムでは企業就職を目指す大学院生は履修することを推薦されていた“Design of Experiment”(略してDOE)という授業がありました。これは簡単に言うと統計学的見地に基づいて、複数ある実験パラメーターをコントロールする実験を設計し、最小の実験で最大の知見を得るための基本知識です。この知識は自分の研究を進める上でももちろん役に立ちますが、工学系企業研究者・技術者には必携のスキルです。DOEは一例ですが、それぞれの専門分野、業界で要求される基礎知識を教えているクラスがあるはずですから、是非、履修しましょう。将来、就職活動で大きな助けとなるはずです。

-インターンシップ

インターンシップが出来るかどうかはもちろん、教授・プログラム次第ですが、可能であるならば、大学院に在籍中、特に夏の3ヶ月間にインターンシップを経験することは将来、就職の大きな助けとなります。例えば、インターンシップ先の企業からオファーをもらう人もいますし、インターンシップが職務経験として活きてさらによい仕事を見つけられる場合もあります。
インターンシップをする場合、一時的に、Research Assistant (RA)を
辞めなといけないかもしれませんし、教授の反対があるかもしれません(研究が滞る)。
指導教官とは十分に話して理解・サポートをしてもらう必要があります。

-良いネットワークを築く

アメリカでは約6割(もっと多いと言う統計もある)の人たちがネットワークを通じて仕事を見つけているそうです。これだけ割合が高くなると、外国人である私たちはなおさらネットワークの力を無視することはできません。ネットワークを築くことは一朝一夕には出来ません。大学院入学前はもちろん入学後も出来る限り多くの人、クラスメート、同じ学科・他学科の院生、教授と知り合いましょう。
知らない人と話すのが苦手な人もいるかもしれませんが、理系大学院にやってくる人たちの多くはアジア諸国を中心とした外国人であり、一緒に勉強し切磋琢磨できる友人を探しています。少し自分のComfort Zoneの外に出てみて、知らないクラスメートに挨拶をしたり、質問をしてみると、そこから素晴らしい友人関係が生まれるかもしれません。
先日、仕事で母校の恩師の研究室を訪問した際に、研究室の大学院生15人ほどに会いましたが、後で個人的に自己紹介をしに来たのはその中の2人だけでした。
このような機会(企業で働いている卒業生と直接知り合いになる)は大きなチャンスですから、自己紹介をし、名詞の交換、あるいはレジュメの手渡しをしましょう。
私が就職活動をしていた頃、修士号を取って卒業し、半導体企業に勤めている元クラスメートが、自分の出身研究室を訪問し、その研究室の院生・ポスドク5人を一度にその会社に採用していくのを目の当たりにしました。その当時、アメリカは不景気で、就職活動で四苦八苦していた私は彼らを羨望の眼差しで見ていました。
学会を有効に使いましょう。学会にはアカデミックな研究者、大学院生だけではなく、多くの企業人もやってきます。興味のある企業の人には勇気を持って積極的に話してみましょう。実は私の今の仕事は学会+ネットワークを通じて見つけました。学会に出席した際に、同じ研究室にいたVisiting Scientistの方の紹介で企業技術者の方にお会いし、その縁でその会社に就職することになりました。ただ、その方にお会いしてから実際に就職するまで2年以上かかっており、知り合えばすぐに仕事を紹介してもらえる、という単純なものではないことを強調したいと思います。普段からネットワークを広げる努力をしていく必要があります。

-インターネットをネットワーク作りに活用する

Facebookを創設したMark Zuckerburgを描いたThe Social Networkという映画が2010年に公開されたのはまだ記憶に新しいかと思います。
Facebookはかなりプライベートなソーシャルネットワークですが、もう少し、Professional なネットワーキングに特化した

www.linkedin.com

があります。スタンダードのアカウントを作るのは無料なので、まだアカウントを作っていなければ、是非、作ることをお勧めします。
このネットワークサイトを利用すると、自分の興味のある分野で活躍する人たちの存在を知ることが出来ます。サイトのツールを利用すると会ったことがない人に対してもネットワークに入ってもらえるようにリクエストすることは出来ますが、会ったこと、話したことも無い人とのネット上のコネクションは実際にインタラクションを持ったことのあるコネクションに比べると当然、弱くなってしまいます。
私も時々、全く知らない人からリクエストが来ますし、実際にリクエストを受け入れたことも多々ありますが、やはり実際に知っている人とのコネクションとは比べ物になりません。また、知らない人のリクエストを受け入れてネットワークでつながった直後に仕事を紹介してくれ、と言われたことが何度もありますが、一応、レジュメはHRに転送しておくとは言いますが、正直、このような人には仕事は紹介しませんし、推薦もしません。
直接あったことがある人とのコネクションは別とし、大学院生の限られた機会の中で、ネットワークを広げるために出来ることとして、例えば、LinkedInならば、様々な専門分野のネットワークグループがあるので、そのネットワークグループでのディスカッションに積極的に参加することは、ネットワークを広げる上でプラスになりえます。もちろん、発言内容によってはマイナスにもなりえますので、注意が必要です。

-良いネットワークとは

プロフェッショナルな意味での“良い関係”と言うのはGive and takeだと私は思います。例えば、面識があまりない人に大きな頼みごとをしても、実際に頼みごとを聞いてもらえるのは難しいというのは容易に想像できるかと思います。
気のおける友人は別として、コンタクトの人に仕事を紹介してもらう、あるいは強く推薦してもらうにはその前に、彼or彼女なら推薦できると思わせる何かが必要です。すでにその人のためにあなたが何かをしてあげていたらつまり“Give”のプロセスがあったとしたらどうでしょうか。あなたなら、自分を助けてくれたことのある人とそうでない人のどちらを助けたいですか。もちろん大きなことをする必要はないですよ。

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次回は就職活動にはかかせないレジュメの準備から紹介していただきます。
お楽しみに。

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発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 石井 洋平
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