2017年4月23日日曜日

「新留学生リレー日記」第5回 イギリスの大学院


「新留学生リレー日記」第5回はOxford大学の江口さんに、イギリスでの博士課程について紹介していただきます。

Oxford大学の街を占める伝統的な建物

まず、イギリスにおける修士号は、講義中心のTaught Masterと研究中心のResearch Masterとに大別されます。前者は文系分野ではMA (Master of Arts)、理系分野ではMSc (Master of Science)が授与され、後者は文理関係なくMRes (Master of Research)が授与される事が一般的です。
Taught Masterでは、必要とされる一連のモジュールを受講することで修士号が授与され、学部課程よりも自主的な学習を必要とされながらもやるべき事は明確に定められている点が特徴です。一方でResearch Masterでは、研究中心という性質上詳細なタイムテーブルはなく、学生の積極性・自主性が不可欠になります。


イギリスでの修士・博士課程の種類

他にも国際標準教育分類レベル7でありながら、修士課程から修論執筆を省いたPG Dip (Postgraduate Diploma)やPG Cert (Postgraduate Certificate)という、キャリアアップを目的とした短期集中型の課程も存在します。また、LLM (Master of Laws)やMBA (Master of Business Administration)等の専門職修士もあり、より実践的な知識・技術を習得するという選択も可能です。

次に、レベル8に準拠する課程として、PhD及びDBA (Doctor of Business Administration)やMD (Doctorate of Medicine)等の専門職博士があります。前者が学生の学術研究の訓練を軸にしているのに対し、後者は既に経験のある専門家の専門知識をより深めることを軸にしているという違いがあります。

私の在籍するオックスフォード大学の場合、現在在籍する日本人は95名と全体の0.5%程度で、博士課程に絞るとおそらく10人程度ではないでしょうか。この大学では、ハリーポッターの寮の元ネタとなった「カレッジ制度」が学生生活に独特な体験を生みます。カレッジの仲間と生活を共にし、学部の垣根を越えた議論で毎晩盛り上がったり、大晩餐会で燕尾服を身にまとって贅沢な一夜を明かしたりと、研究室の外に肩の力を抜ける環境があることはとても良い事だと思います。


伝統的なカレッジでの晩餐会

夕方には閉まってしまう図書館や、携帯やWi-Fiの電波の悪さ等、不満に思う部分は沢山あります。しかしそんな不便は笑いのタネです。留学先に迷っているのであれば、学問プラスαで何か特別なことを体験できる環境を選ぶことをお勧めします。留学は想像以上に大変な事も多く、挫折し帰国する人も少なくはありません。これを戦い抜くためには、やはり人や町や文化といった環境は大切です。勉強や研究だけでは折れてしまいかねない心も、きっとそんな環境が強い支えになってくれるからです。折角の留学、誰もが後悔することのない選択ができることを祈っています。 

第6回に続く

新留学生リレー日記
第1回 Oxford & UC Davis & Tübingen
第2回 英米独の学位制度
第3回 アメリカの大学院
第4回 ドイツの大学院
第5回 イギリスの大学院

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執筆者プロフィール

江口 晃浩(えぐち あきひろ)
高 専時代にAFSを通じてオレゴン州の高校で一年間の交換留学を経験。2008年より米国アーカンソー大学に進学し、2011年春に理学士(コンピュータ・ サイエンス)、2012年に教養学士(心理学)を取得。同年、英国オックスフォード大学大学院に進学し、計算神経科学の博士号過程に在籍中。ブログ「オックスフォードな日々http://hogsford.com
村瀬 彩華 (むらせ あやか)
カリフォルニア大学デービス校 食品科学科の修士1年生 学部卒業後に渡米
専攻は食品微生物学
川口 雄久(かわぐち かつひさ)
チュービンゲン大学 マックスプランク神経行動科学大学院のD2
学部卒業後に渡独 研究内容は視覚情報処理と意思決定
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発行責任者: 武田 祐史
編集責任者: 日置 壮一郎